まだ気まぐれ小説が続いています。
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「う~寒っ」
まだ4時過ぎとはいえ既に陽が傾き始めた1月下旬、風呂で暖まるには申し分ない。
バイクのキーを回し、チョークを引いてエンジンをかける。この寒さでバッテリーが上がっていないことに安堵する。
こんな時はやはり車が欲しいな、とも思う。
10分ほど走りスーパー銭湯『湯楽町』に着く。体はすっかり冷えきった。
ここには3年前就職で今のアパートに引っ越してきてから間もなく、彼女が訪れてきたときに一度だけ来たっきりだった。
バイクで10分という距離が微妙に遠く、1200円という入浴料が日常的に利用するにはやや高いのだ。
その時のヘルメットは今はもうない。
この寒さのせいか駐車場は満車に近い状態だった。
券売機で入浴券を買い、カウンターでロッカー用コインと引き換える。
『男』と力強く字体で書かれたいかにも風呂というのれんをくぐり引き戸を開けると、湿気を帯びた温かい風呂の匂いに包まれた。
荷物と服をロッカーにしまい、浴室に入る。車の台数に比べて人間はそれほど多くなかった。幸い芋洗い状態にならずに済みそうだ。
大風呂やジャグジー、サウナなど5つの風呂があり、その中のひとつである日替り風呂は赤ワイン風呂だった。
元を取るというつもりはないが、一通りの湯を堪能した頃にはすっかり暑くなっていた。少し足元がふわふわし、ワイン風呂で皮膚からアルコールでも吸収したのだろうかと思ったが、どうやら湯当たりしてしまっていたようだ。
裸で倒れては恥ずかしいぞと水飲み場で冷水を飲み顔に当て、その心地よい冷水で気を取り戻した。
最後にぬるめのシャワーで滲んだ汗を流し、1200円の風呂から上がる。扇風機の風が心地よい。
着替えのTシャツ一枚で休憩室のあるフロントに向かう。芯から温めた体はまだじんわり熱を持っている。バイクで来ているためにビールが飲めないのが残念だった。
代わりに冷えたコーヒー牛乳をゴクリと喉に流し込む。
柔らかな椅子と風呂上がりのホクホク感でしばらく心地好さに惚けていたが、慌てて本来の目的を思い出し例のディグリードを接続しアプリを起動する。
機器が小さいのは便利でいいなと改めて思った。
イヤホンのようになっているのも目立たない。なかなかよく出来ていると妙に感心してしまった。
『お預け入れ』をクリックすると、どのように計算されたか分からないが
3.8℃お預け入れ可能です
と表示された。
たったそれだけか、とややがっかりしたが、とりあえず3℃入れてみることにした。
冷たいコーヒー牛乳を飲んだのは失敗だったかもしれない。
よくある確認画面が表示され、『確認』をタップする。
何だ、何も変わらないじゃないか
と思ったその時、すっとさっきまでの暑さが引き、もう一枚上に羽織りたいくらいになった。
…これはうまく預け入れる量を考える必要があるな。
結局、家に帰るまでに身体が冷えることを考え、もう一度風呂で体を温め直すことにした。
今度はすぐに服を着込みバイクにまたがった。フェイスガードの隙間から入る風はやはり痛いように冷たい。
夏に登録できてたらよかったのにな、などと考えながら、すっかり暗くなった道をコートに身を包む人々を横目に見ながらアパートに戻った。
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考えてあったのはここまでです_φ(・_・
この先の展開は…続くかもしれないし続かないかもしれません(笑)
もこもこと湧いてきたら続きを書こうと思います。